日日 亀の尾 720ml

　若手醸造家の中でも特に農業と真摯に向き合い、山田錦の名産地、東条町に足繫く通う 松本日出彦氏が京都の地で新たに立ち上げたクラフトSake醸造所が「日々醸造」です。京都盆地に降り注いだ雨水が伏見区に湧き出る軟水の名水「御香水」を仕込み水に深い味わいを引き出す酒造りを追求し、「ダイニングでボトル1本飲める日本酒」という明快なコンセプトのもと、情熱をもってかもされている酒です。

　この酒の原料米は栃木県さくら市産の亀の尾。しかも松本日出彦氏とも親交の深い、栃木の『仙禽』で知られる株式会社せんきんより譲り受けた特別な亀の尾です。亀の尾は古くから存在する品種。山田錦のような使いやすい米とは違いますが、複雑な旨味を持ち、個性的で他の酒米では味わえない独特の魅力があり、醸造家なら挑戦してみたい酒米であると言われています。

　立香は洋ナシや白桃のような自然なフルーツの香り、そして控えめなヨーグルト様の乳製品の香りがほのかに香ります。含香はリンゴや洋ナシのような香りで嫌みがなく、料理を引き立てます。

　口当たりは、ピチピチした微炭酸を感じます。爽やかで軽快。スムースに舌を滑ります。山田錦に比べると、比較的スリムでサッパリとした印象があります。
　味わいは、程よい広がりのある旨味を感じ、そのあとにスマートな甘味が口中に広がります。非常にエレガントで都会的なテクスチャーが感じられます。最後にスッキリとした辛味が全体を美しくまとめ上げています。

　余韻はスッキリとしたスリム感。これはアルコールが12％であることにも関係していると思いますが、アルコール感よりも、むしろ仕込み水である「御香水」の柔らかさを感じさせるフィニッシュとなります。
　亀の尾らしさ、日々醸造らしさ、双方のコラボレーションとは何か？を真剣に考え、取り組んだこの酒は、日々醸造の新たなる可能性を示唆ているような気がします。それも、これも松本杜氏の卓越した技術と情熱があるからこそですよね。